【過去問丸ごと解説!】第60回 気象予報士試験 実技1

第60回実技試験1 実技試験

問1

気象業務支援センター

問1(1) 地上天気図

早速、問1の(1)から問題を解いていきましょう。

まず、図1の地上天気図を見ます。

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日本海中部には前線を伴って発達中の低気圧が①30ノットで東北東に進んでいます。

そして、この低気圧に対して②海上暴風警報が発表されており、低気圧中心の南西側1100海里以内と北東側900海里以内では、最大で③50ノットの風が吹いています。

また、三陸沖には2つの低気圧がともに④東北東に進んでいることも読み取れます。

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図2(下)によると、700hPa面では、日本海中部と三陸沖の低気圧ともに進行方向前面の上昇流が強く、その値は最も強いところで⑤-113hPa/hです。

単位や符号をつけるのをわすれやすいので注意しましょう。

850hPa面では、風向から三陸沖の2つの低気圧の進行方向前面で⑥暖気移流が、日本海中部の低気圧の進行方向後面で⑦寒気移流が明瞭になっていることがわかりますね。

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図3によると、日本海中部と三陸沖の2つの低気圧で、中心から北側にかけて明白色の雲域が広がっています。

赤外画像で明白色であるということは⑧雲頂高度が高い雲域ですね。

また、図1にあるウルルン島の実況図をみると、全雲量は8分の7で雲の種類は⑨積雲⑩層積雲、天気は⑪弱いしゅう雨となっています。

実技試験直前復習辞典

ここまでは問題ないですね。次に進みましょう。

問1(2) 寒冷前線

問1の(2)です。

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問1の(2)の①では寒冷前線の通過時刻を読み取ります。

図4を見てみましょう。

0.3kmでの寒冷前線が通過した時刻は風向の変化を確認していくことになります。

一般的に寒冷前線が通過する前と通過するあとでは南風から、北風に変化します。

これは、図で考えるとわかりやすいです。

低気圧周辺では反時計回りに風が吹いており、低気圧が進むと寒冷前線が通過していくわけですが、黄色の点では時間が進むと風向が南寄りから北よりに時計回り変化しますよね。

この変化のタイミングが通過時刻になります。

図4でも同様に考えていくと、風向が西南西から西北西に変化している時刻があります。

時刻は9時0分

理由は「風向が西南西から西北西に時計回りに変化したため。」となります。

問1の(2)のです。

先ほどは0.3kmでしたが今度は1.5kmでの寒冷前線の通過時刻です。

同様に考えると、時刻は11時30分ですね。

この時刻をもとに、前線に直行する方向の平均的な勾配を求めます。

問題に書いているのはA/B算出することです。

まずAは1.2kmですね。

Bについては(1)の9時、そして11時30分、問題文の速さ60km/hを使用することで求めることができます。

前線は60km/hで2時間30分進むわけなのでBは150kmであることがわかります。

つまりA/B=1.2/150=1/125

F=125となります。

問1の(2)のです。

前線面の作図です。

それぞれの時刻で上空に向かって反時計回りに風向が変化する=寒気移流となる層の矢羽根の中心付近の高度を読み取り滑らかにつなぐことで答えをもとめることができます。

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赤丸の点が風向の変わり目ですね。

これをつなぐとこうなります。

温度移流については温度風の考え方を理解しておくことも重要ですので、作図問題がよくわからなかったかたは、こちらの記事も参考にしてみてくださいね。

【5分で読める!】温度風とは何か?考え方を気象予報士がわかりやすく解説!

問2

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問2(1) トラフの移動

問2の(1)です。

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図2(上)にはトラフが3つ示してあります。

12時間後のA、Bトラフの移動を考えていきましょう。

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トラフ解析にあたっては、渦度の極大値、等高度線の曲率が大きいところを見ていくことになります。

トラフAの先にはかならずトラフBがあり、どちらも極値が見られるところであれば、図の赤太線が可能性として考えられますね。

あとは、5160mの等高度線と交わる経度を読み取ると答えとなります。

Aは145(144)°、Bは149(150)°です。

問2(2) 低気圧の移動

問2の(2)です。

まず、問2の(2)の①から。

問2(1)で考えたトラフの位置と地上低気圧との位置関係をみてみましょう。

問題文にある「この低気圧」というのは三陸沖で一つにまとまった低気圧のことを指しています。

12時間後の地上天気図で北海道付近にLが2つ確認できますが、東の方のLのことですね。

5160mとトラフA、Bの点からこの低気圧の方向を読み取るとトラフAは北東、トラフBはほぼ同位置であることがわかります。

また、距離は緯度10°分の距離、トラフAと低気圧中心まで距離を定規を使い読み取り、計算すると、トラフAは500(400)km、トラフBは0kmとなります。

このあたりは、実際に自分で手を動かして計算してみることをお勧めします。

【5分で読める!】気象予報士実技試験での定規の使い方!効率よく問題を解く方法をご紹介!

問2の(2)の②です。

まず、7日9時に三陸沖にあった2つの低気圧は北海道の南と三陸沖に位置していました。

このとき、これら2つの低気圧はトラフBの前面に位置していましたね。

そして12時間後になると、2つの低気圧は1つになり、トラフBと同位置、トラフAの北東側に位置するようになりました。

さらに24時間後、トラフBがなくなり、トラフAが低気圧にかなり近づきます。

また、時間の経過とともに、中心気圧は低下し低気圧は発達していきます。

さて、これは何を意味するのでしょう。

そうです。

低気圧の発達に影響するトラフがBからAに変わっているんですね。

これらを、解答の始まりに注意しまとめると、「2つの低気圧は、初めの12時間はトラフBの進行方向前面で発達し(1つにまとまり)、その後の12時間はトラフAの進行方向前面で発達する。」となります。

問2の(2)の③です。

前線の作図です。

地上天気図と700hPa、850hPa天気図の情報を見ながら、考えていきましょう。

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私がおすすめする、前線解析の手順を紹介します。

まず、最初に低気圧が閉塞しているかを確認します。

500hPaの強風軸の北に低気圧中心が位置していれば閉塞していると判断してよいでしょう。

今回の場合、明らかに北に位置していますので、閉塞していることがわかります。(①)

次に850hPa天気図で低気圧中心から、等温線の凸部に沿って、仮に線を入れてみます。

仮線は、最後に地上天気図の気圧の谷と照らし合わせて確認しますので、この段階では黒、青、赤の線をトレーシングペーパーに記載しておきます。(②)

そして、強風軸とこの仮の線の交点が閉塞点になります。

最後に温暖型閉塞前線か寒冷型閉塞前線かを確認します。

進行方向後面が前面にくらべ相対的に低温であれば寒冷型閉塞前線になります。

今回の場合は後面が-12℃から-6℃、前面が-9℃ですので、寒冷型閉塞前線と判断しました。(③)

あとは仮で入れた線と地上の気圧の谷を見比べ、大きくずれていなければ地上の気圧の谷を優先させて線を滑らかに引けばこたえになります。

もちろん、最後に前線記号をわすれないように注意しましょうね

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前線解析のポイントをおさらいしておきます。

あとは練習あるのみです。

①強風軸から前線の閉塞有無の確認
②低気圧中心から等温線(等相当温位線)の
 凸部の南端にそって仮線をひく。
 強風軸から閉塞点の位置推定。
③寒冷型、温暖型閉塞前線を前面、後面の
 気温から判断。
④地上天気図の気圧の谷との関係を確認。

問2(3) 地上の気圧の谷

問2の(3)です。

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問2の(2)の①は記述問題です。

7日21時の地上天気図と700hPa及び850hPa天気図を並べています。

地上天気図には点線で示す気圧の谷が日本海に確認できます。

同じ個所の鉛直流、気温の分布を読み取りましょう。

まず鉛直流についてですが、地上の気圧に沿うように細長く帯状に伸びる上昇流域が確認できますね。

また、気温の分布については気圧の谷に沿って、気温の高い等温線が北に凸となる形状が見られます。

これは温度場の尾根と呼ばれるものです。

まとめると、700hPa面での鉛直流は「地上の気圧の谷に沿って帯状の上昇流域となる。」、850hPa面での気温分布は「地上の気圧の谷にそって温度場の尾根となる。」となります。

問2の(2)の②では、風の分布を読み取ります。

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地上天気図で気圧の谷の北東側と南西側の風分布を比較します。

問題文に風の分布の特徴と問われ特に条件がない場合は、風向と風速は言及する必要があります。

まず北東側です。

等圧線はほぼ南北に平行に伸びていますので、北よりの風が吹いていると考えられます。

次に南西側です。

等圧線を見ると西から東に向かって伸びていることから西よりの風が吹いていますね。

風速は等圧線の間隔で考えると、北東に比べると、南西側の方が狭い。

つまり相対的に強く吹いていることがわかります。

そして、北東側で、北より、南西側で西よりの風が吹いて風速も異なる。

このような状況になるとどうなるでしょうか。

行き場を失った風は収束して上昇流になりますね。

これらをまとめると「地上の気圧の谷の北東側は北よりの風、南西側は西よりの風で相対的に強く、気圧の谷付近で風が収束する。」となります。

この問題の解答のポイントは風向、風速、収束です。

よく出題されるパターンですので理解できれば、そのまま解答を覚えておきましょう。

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問2の(2)のです。

気圧の谷の移動を見てみましょう。

地上天気図で12時間後と24時間後の気圧の谷を比較しています。

東経135°付近の気圧の谷はどう変化しているでしょうか。

ぱっと見ただけでも、0.5°以上は北に移動していることがわかりますね。

よって気圧の谷の24時間後の予想位置は12時間後にくらべ「北にある」が答えになります。

問2の(2)のは穴埋め問題です。

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図8では▲の位置が地上の気圧の谷として表現してあります。

まず上の図で相当温位の状態を確認してみましょう。

地上の気圧の谷の上空680hPaより下層では相当温位は上空ほど(ア)低く(イ)対流不安定ですが、それより上層は安定しており680hPa付近を境に異なっています。

またこの高度は湿潤層の上端の高度とも近いことから、(ウ)bの気団変質を受けた気層の上端を示すと考えられます。

他の選択肢は680hPa上空までの湿潤層の形成の理由になっていないことから消去法でbとなります。

次に対流不安定となっている気層の上端は北緯37.9°では(エ)750hPa、北緯35.9°では(オ)800hPa付近で地上の気圧の谷の上空が最も(カ)高くなります。

対流不安定の高度は定規で正確に読み取るようにしましょう。

【5分で読める!】気象予報士実技試験での定規の使い方!効率よく問題を解く方法をご紹介!

また、気圧の谷の上空では最大で-120hPa/hの(キ)上昇流が予想され、(ク)950hPaから660hPaにかけて湿数3℃以下になると予想されています。

これらから、地上の気圧の谷付近では(ケ)対流性の雲が発達する可能性が高いといえます。

問3

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問3(1) 雲底の高度

問3の(1)です。

雲の雲低高度は持ち上げ凝結高度と呼ばれます。

等飽和混合比線と乾燥断熱線の交点ですね。

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輪島の状態曲線に図示するとこうなります。

赤線の高度です。

雲低高度は950(940)hPa、等値線の名前は乾燥断熱線等飽和混合比線となります。

問3(2) 浮力がなくなる高度

問3の(2)です。

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問題文の空気塊の浮力がなくなる高度は平衡高度と呼ばれています。

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持ち上げ凝結高度から湿潤断熱線に平行に線を伸ばしていき、気温の状態曲線と2度交わる点が平衡高度です。

図の赤線の高度ですね。

この高度を正確に読み取ると、660(650、670)hPa、気温は-28(-27、-29)℃となります。

問4

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問4(1) シアーライン

問4の(1)です。

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問4の(1)の①では、点線で示されたシアーライン付近の特徴を考えます。

まず気温分布についてです。

点線の北西側、南東側で比較すると、相対的に北西側では高温であることがわかりますね。

次にエコー分布です。

トレーシングペーパーにシアーラインを転記してエコー図に重ねてみるとわかりやすいですが、シアーラインに沿って、5mm/h以上のエコーが分布していることがわかります。

これらをまとめると、気温分布は「シアーラインの北西側は相対的に高温、南東側は低温である。」、エコー分布は「シアーラインに沿って降水強度5mm/h以上のエコーが分布している。」となります。

問4の(1)のです。

シアーラインは降水強度の大きい領域を1本の線で伸ばしていくと、答えになります。

この問題でヒントとなるのは降水強度しかないですからね。

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問4(2) シアーラインの動向

問4の(2)です。

問4の(2)の①では、シアーラインの通過時刻を考えます。

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シアーラインは8日9時には高田を通過しており、南風が吹いています。

通過前には北よりの風であったことが考えられるため、風向が変化した3時が通過時刻と推定できます。

問4の(2)のです。

風向が通過前後で北西から南よりの風に変化していることから南から北に向かってシアーラインが移動して高田を通過したことがわかります。

もしそのまま北上を続けていた場合、エコーから降雪は次第に収まり、気温も上昇に転じると想定されますが、時系列では気温や降雪量に大きな変化はありません。

つまりエコーは高田を通過後、しばらくは停滞していたことが考えられます。

よって答えは「」、理由は「風向が北西から南りに変化し、気温が下降、降雪が強まった後も、風は南寄りで気温が低く、強めの降雪が続いた。」です。

問4の(2)のです。

雪水比を計算しましょう。

8日9時の前6時間での降水量は21mm、降雪量は17cmですので、雪水比=17/21≒0.8となります。

問4(3) 上越市の予想

問4の(3)です。

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問4の(3)の①では、降水量から降雪量の最大値を求めます。

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降水量から降雪量への変換には(2)で求めた雪水比を用いることで答えを導くことができます。

まず9時から12時です。

四角枠の上越市での3時間降水量の最大値は黄色着色がありますので、20mmですね。

よって、降雪量は雪水比を用いると20mm×0.8=16cmとなります。

同様に12時から15時を見ると、3時間降水量の最大値は橙色で30mm、降雪量は24cm。

15時から18時では、3時間降水量の最大値は濃い青で10mm、降雪量は8cm。

18時から21時では、3時間降水量の最大値は濃い青で10mm、降雪量は8cm。となります。

正しく読み取ることができれば、比較的短時間で完答できるはずです。

問4の(3)のです。

上越市の大雪警報の発表基準は問題文から6時間降雪量が30cmです。

つまり、6時間で降雪量が30cmを超える時間帯を確認すればよいことになります。

①の解答から累積30cmの降雪量を超えるのは12時から15時ですね。

12時から15時というのは気象用語でなんでしょうか。

答えは昼過ぎですね。

まとめ

皆さんお疲れ様でしたー!

計算問題も所々に出題されましたが、正しく読み取ることができれば、そんなに難しくはない問題が多かったかと思います。

ただ、実際の試験のときには時間の制約や環境の違いで、普段間違えない問題も、焦って間違えてします可能性は十分にあります。

過去問を繰り返し解いていく中で自分が間違えやすい失敗パターンを見つけていくことも大切ですね。

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