皆さんこんにちは!気象予報士のyoshi.です。
気象予報士試験には作図問題が必ず出題されますが、苦手意識を持たれている方も多いのではないでしょうか。
前線解析や等圧線解析、等風速線解析。
作図といっても色々な種類があります。
作図問題の勉強では、やはり過去出題された問題を解いていくというのが効率的です。
今後も似た傾向の問題が出題される可能性もありますし、出題者の問題の構成も理解していくことができますしね。
この記事では作図問題だけに特化して、過去の出題された問題の解説をしています。
苦手な方はぜひ見返して自分の考え方を整理していってくださいね。

第63回 気象予報士実技試験
実技1
前線解析
気象業務支援センター
前線作図の問題ですね。
気象業務支援センター
図5を用いてと記載してあるので、500hPaの強風軸、850hPaの等温線と風向、地上天気図で前線位置を推定していく必要があります。
まずトレーシングペーパーに地上低気圧中心をマークして500hPa天気図に重ねてみましょう。
強風軸が低気圧中心の南側を通っていることがわかりますでしょうか。
これは前線が閉塞している特徴で、強風軸にそって閉塞点があることを表しています。
次に強風軸も写したトレーシングペーパーを850hPa天気図に重ねてみます。
そうすると、中心の南から南東にかけて、中心を取り巻くように冷たい空気が巻き込んでいることがわかり閉塞しているということがここでもわかります。
強風軸と等温線集中帯の南縁、東側の上昇流域の交わる箇所に閉塞点があるのだろうと推定できます。
また気温についてみると、寒冷前線後面の寒気が強いため寒冷型閉塞前線ですね。
閉塞点がわかれば中心からそこまで閉塞前線を引きつつ、寒冷型閉塞前線となるよう低気圧の気圧の谷にそって前線を引くと解答を導くことができます。
気象業務支援センター
今回の場合、上昇流域や等温線集中帯が気圧の谷にそっているので、地上天気図の気圧の谷を優先に考えて線を引けば前線になりますが、問題によっては気圧の谷が前線にならない場合もありますので、天気図をよく見て状況に応じて適切に判断していくようにしましょう。
等圧線解析
等圧線解析の問題です。
気象業務支援センター
1000hPaは図9で000と表記されます。
これが表記される可能性のある場所を探していく必要がありますね。
図9ではわかりにくいので、少し色分けしてみましょう。
1000hPa未満を青丸、1000hPa以上を赤丸として色分けしてみます。

いかがでしょうか。
1002hPaの線がすでに黒実線で記載されていますが、1000hPaはこの線より内側にあるはずです。
そして色分けをした後に赤と青が反する境界及び000があればそこを通るように緑線をいれてみると、1000hPaのラインがだいぶわかりやすくなるのではないでしょうか。
あとは滑らかに線をつなげば答えを導くことができます。
気象業務支援センター
実際の試験でもこのように識別してやると間違いが限りなくなくすことはできます。
ただ時間がかかりますので、識別をするのであれば、できるだけ他の問題を素早く解いて作図に時間の余裕をつくることが大切になってきます。
実技2
前線の解析の問題です。

問1の(4)で考えたように、850hPaの前線は赤線で示される位置にあることがわかりました。
そして停滞前線は等相当温位集中帯の南端に沿って伸びることがわかっています。
地上前線は850hPaの1~2度南に位置しますので、それを考慮すると前線の位置を推測することができます。
気象業務支援センター
第62回 気象予報士実技試験
実技1
前線解析
気象業務支援センター
前線の作図問題です。
気象業務支援センター
前線の作図を考えるにあたってはまず前線が閉塞しているかどうかを読み取ります。
500hPaでの強風軸は概ね高度5640mに沿っていることがわかり、地上低気圧はこれより北側に位置していますね。
つまり、閉塞前線を伴う前線であることがわかり、その閉塞点はその高度のラインと850hPaの等温線の突っ込み部分のある3℃等温線のすぐ南側を通る線の交点となります。
あとはその交点から寒冷前線を3℃等温線にそって枠線まで引くと解答を作図することができます。
このとき地上天気図も確認する必要があり、気圧の谷が明確にわかればそこを通るように作図していくこともポイントになります。
気象業務支援センター
等温線解析
気象業務支援センター
等温線の作図ですね。
1本の線で枠線まで伸びているということが解答を考えるポイントになります。
気象業務支援センター
等温線は北側が冷たく、南側が暖かいということは一見してわかります。
12℃となる等温線を左端から考えていくと赤実線のようになるのはわかりますでしょうか。
これを滑らかにつなぐと12℃の等温線となります。
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実技2
気象業務支援センター
前線解析の問題です。
問1の(2)の③で考えたように、初期時刻に九州付近にあった低気圧は、24h後には日本のはるか東の低気圧の位置まで移動するんでしたね。
そして前線は9℃の等温線に沿うという考え方をしました。
寒冷前線についてはこの9℃等温線のすこし南側に沿うように引けば答えを出すことができます。
もちろん、地上天気図の気圧の谷や風向、降水域の範囲も図示した前線と違和感なく対応しているかは念のため最後に確認するようにしてくださいね。
気象業務支援センター
第61回 気象予報士実技試験
実技1
前線解析
気象業務支援センター
前線解析の問題です。
前線解析を行うにあたってのヒントを地上天気図に記載しました。
これから説明する手順で考えると、解答に近い答えを導くことができますのでぜひ練習してコツを習得してみてくださいね。
まず、問題から解答する前線は枠線まで伸びているとありますので、低気圧に伴う温暖前線、寒冷前線は枠線まで伸ばす必要があります。
これを頭の片隅において、まずこの前線が閉塞しているのかそうでないのかを考えます。
一般的に上空の強風軸が地上低気圧の南側を通過していれば閉塞していると考えられています。
これは西から迫ってきたトラフが閉塞する最盛期には直立することが要因となっています。
【5分で読める!】温帯低気圧とは何か?気象予報士がわかりやすく解説!
今回の場合は、低気圧中心の南側を緑矢印で示した強風軸が通っていますので閉塞していると考えて問題ないでしょう。
次に前線の位置を確認します。
前線の位置を推定するためには等相当温位集中帯や等温線集中帯を中心に判断していきますので850hPa天気図(気温、鉛直流、風向)を見ていきます。
前線を引く際にはまず、等温線集中帯の凸部に沿って線をひいてみてください。
そこは鉛直流も大きく温度傾度の大きい箇所に該当しますので前線がそのあたりを通っているという目安になります。
図では-195hPa/hや-181hPa/hと記載ある強い上昇流が確認できる箇所ですね。
そして温暖前線、寒冷前線とも等温線集中帯の南縁付近を通るように低気圧中心から線を引くと地上天気図の青や赤の線になります。
この伸ばした線と先ほどの強風軸の交点がおよその閉塞点になります。
ここまでくれば、あとはもう少し。
閉塞前線の型を確認します。
閉塞前線には温暖型閉塞前線と、寒冷型閉塞前線があり、前者は「入」のような形、後者は「人」のような形になります。
この形を決めるのは閉塞前線進行方向前後での温度差です。
後面の気温が前面にくらべ暖かい場合は温暖型閉塞前線、後面の気温が前面にくらべ冷たい場合は寒冷方閉塞前線となります。
850hPaの等温線から前線前後の気温を確認すると、前面は-3℃から3℃くらい、後面は0℃から6℃くらいで、個人的には若干後面の方が気温が高いように思いますので温暖型閉塞前線かなと考えます。
ただ、今回の場合は温度差がわかりにくいため、どちらの形でも正解になろうと思います。
これらを考慮して前線解析を行えば解答のような答えになります。
気象業務支援センター
等温線解析
気象業務支援センター
1℃の等温線を作図していきます。
このような問題では、1℃の等温線が通る場所をある程度推定してから線でつなぐ方法が有効です。
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すでに図示してある気温及び2℃、0℃の等温線をもとに1℃の等温線が通りそうな箇所を直線でつないだものがこちらになります。
2℃と0℃の間には必ず1℃の等温線が通ります。
また等温線自体が山や谷になってはいけないルールがありますので、0℃と0℃の間に1℃の等温線は通すことはできません。
それを考慮すると1本で1℃の等温線を作図するルートはこれしか考えることができませんので、あとは滑らか線をつなげば答えになります。
気象業務支援センター
実技2
等圧線解析
気象業務支援センター
等圧線解析になります。
今回の問題では2本の波線を引くことと、線が枠まで達しているか、閉じているものとすると問題にヒントが記載されています。
問題から、なんとなく1本の等圧線は直線で、もう1本は閉じている等圧線かなということは感のよいかたなら推測できるかと思います。
さて、問題を解くにあたってまず対象となる等圧線の気圧を読み取りましょう。
地上天気図に追記してみましたが、西から1004hPa、1008hPa、1012hPaになりますね。
北にある▲で閉じた等圧線は反時計回りの風向から低気圧あることが読み取れますので、1004hPaとなります。
1006hPaの補助線を引くのですが、1004hPaと1008hPaは確実に通ります。
ですので、直線で引けるのは閉じた1004hPaの等圧線とその東の1008hPaの間の緑波線あることがわかります。
これで一つ目の補助等圧線が引けました。
あとはもう一つの等圧線を探します。
閉じた1004hPaの等圧線の西に目を向けるとHの記号が確認できますね。
この箇所は相対的に気圧が高いことを意味しています。
つまりここにも補助等圧線が必要になります。
ただ1004hPaと1004hPaの間は1本の直線では引けませんので、閉じた等圧線として引くことになります。
すると等圧補助線は緑波線のようにHを取り囲むようにひくことができます。
あとは周りの等圧線との間隔を考慮し滑らかに引けばと答えになります。
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第60回 気象予報士実技試験
実技1
前線解析
気象業務支援センター
地上天気図と700hPa、850hPa天気図の情報を見ながら、考えていきましょう。
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私がおすすめする、前線解析の手順を紹介します。
まず、最初に低気圧が閉塞しているかを確認します。
500hPaの強風軸の北に低気圧中心が位置していれば閉塞していると判断してよいでしょう。
今回の場合、明らかに北に位置していますので、閉塞していることがわかります。(①)
次に850hPa天気図で低気圧中心から、等温線の凸部に沿って、仮に線を入れてみます。
仮線は、最後に地上天気図の気圧の谷と照らし合わせて確認しますので、この段階では黒、青、赤の線をトレーシングペーパーに記載しておきます。(②)
そして、強風軸とこの仮の線の交点が閉塞点になります。
最後に温暖型閉塞前線か寒冷型閉塞前線かを確認します。
進行方向後面が前面にくらべ相対的に低温であれば寒冷型閉塞前線になります。
今回の場合は後面が-12℃から-6℃、前面が-9℃ですので、寒冷型閉塞前線と判断しました。(③)

あとは仮で入れた線と地上の気圧の谷を見比べ、大きくずれていなければ地上の気圧の谷を優先させて線を滑らかに引けばこたえになります。
もちろん、最後に前線記号をわすれないように注意しましょうね。
気象業務支援センター
前線解析のポイントをおさらいしておきます。
あとは練習あるのみです。
①強風軸から前線の閉塞有無の確認
②低気圧中心から等温線(等相当温位線)の
凸部の南端にそって仮線をひく。
強風軸から閉塞点の位置推定。
③寒冷型、温暖型閉塞前線を前面、後面の
気温から判断。
④地上天気図の気圧の谷との関係を確認。
実技2
前線解析
気象業務支援センター
前線解析の問題です。
ヒントは図6(下)のみ。
まずは等相当温位線の南端にそって線を引いてみましょう。
青線付近が前線になるであろうということは推測できますね。
あとは前線の種類です。
まずオレンジの点線の領域は相対的な低相当温位域が南側にまわりこんできており、高相当温位域が取り残される形になっています。
風向のシアーも明瞭であることからこの領域は閉塞前線であることが考えられます。
次に赤点線ですが、高相当温位域からの移流がはっきりしていて暖気移流となっていますね。
問題文から寒冷前線とつながって西にのびる停滞前線とあることからこの部分は停滞前線と判断でき、その東側には寒冷前線があることがわかります。
また問3の(2)で名瀬の前線の高度を確認しました。
下の前線の高度は900hPaでしたので、地上では名瀬の南側に前線が通ることになります。
地上天気図での気圧の谷の位置とこれらの考察を組み合わせると解答の前線を解析することができます。
気象業務支援センター
まとめ
作図の考え方について記載していきました。
特に、前線解析では確認する天気図や基本的な考え方は決まっており、その手順に従うとある程度は似た前線になります。
ただ人が作図している以上、完全に一致するというのは難しく、私たちが普段見ている天気予報でも人によって解析結果は異なるようです。
それゆえ、解答には解釈幅が持たされているのが通常でその範囲内に入っていれば正解や部分点をもらえる可能性は高まります。
天気図と模範解答を見比べ、なぜそこに線がひかれるのか、自分の考え方を整理し、理解を深めていくことで、作図センスも磨かれます。
ぜひ、何度も挑戦してみて作図スキルを上げていってくださいね。

