皆さんこんにちは!気象予報士のyoshi.です。
地球大気の風を考える上で必ず必要になってくる地衡風。
今後勉強していく傾度風や地上風や温度風などを考えるための基本となる風になります。
気象予報士試験でも必ずといっていいほど、出題されますので、考え方をしっかり理解しておくようにしましょう。
地衡風とは何か
定義は?
まず地衡風の定義から見ていきましょう。
地衡風は気圧傾度力と地球の自転によって生じるコリオリ力がつりあって吹く風のことをいいます。
式で表すとV=-1/2ΩsinΘρ×ΔP/Δn
ρは空気の密度、ΔPは気圧差、Δnは距離です。
定義の気圧傾度力は-1/ρ×ΔP/Δn、コリオリ力は2ΩsinΘVと表されますのでこれらを等号でつなぎVを求めると先ほどの式となります。
それぞれの数式は試験でも出題されることもありますので、そのまま覚えておくことをおすすめします。
さて、地衡風を考えていくためには気圧傾度力とコリオリ力という用語の意味を理解しておかなかればなりませんね。
まずはそれぞれの力について紹介していきます。
気圧傾度力とコリオリ力
気圧傾度力
気圧傾度力というのは高圧側から低圧側に向かって働く力のことです。
数式で表すと-1/ρ×ΔP/Δnでしたね。

これは、図のように高圧側から低圧側に向かって空気が移動するために働く力となり、圧力差が大きければ移動する力も大きくなります。
簡単な事例で紹介してみましょうか。
例えば、風船を膨らませて指を少し離すと空気がでてきますよね。
あれは圧力の大きい風船の空気が圧力の小さい周りの大気ほうへ移動していることを意味しています。
別に、風船から空気が発射されているわけではなく、空気が移動しているだけなんですね。
パンパンに風船を膨らませたり、より小さい風船であれば、周りとの圧力差も広がりますので、もっと勢いよく空気が移動します。
気圧傾度力はこれと同じような考え方になります。
コリオリ力
次に、コリオリ力についてです。
地球が回転していなければ、気圧傾度力だけを考えればよいのですが、地球は反時計回りに自転しています。
回転しているものの上で、まっすぐ進もうとしてもうまく進めないのはこの力が働いているためです。

図のように反時計回りに回転している地球上を空気が進もうとすると、北半球では右にそれようとする力が働きます。
黄色の矢印です。
これがコリオリ力でこの力がはらたくと結果的に点線のような軌道になります。
コリオリ力の数式を改めてみると、2ΩsinΘVで表されました。
空気塊の移動速度が速ければ大きくなりますし、赤道付近は緯度が小さいのでsinΘが0に限りなく近づき、北極付近では最大になります。
台風が右にカーブするのはこのコリオリ力が存在しているからで、また赤道よりやや北の緯度で台風が発生するのもこの力が影響しているからなんですね。
地衡風
気圧傾度力とコリオリ力がわかったところで、最後に地衡風を考えていきましょう。
まず気圧傾度力というのは高圧部から低圧部に働く力のことでした。
もし地球が自転していなければこの方向に風が吹くことになります。

でも、地球は自転していますので、自転に伴うコリオリ力を考える必要があります。
コリオリ力は風向に対して直角に働く性質がありますので、図の黄色矢印のように力が働くことになります。



徐々に向きが東にかわり最終的には気圧傾度力とコリオリ力がバランスして高圧部を右手にみるように平行に風が吹くようになります。
この緑矢印が地衡風となります。
日本の上空で吹いている偏西風は、この地衡風のことです。
日本がある中緯度では南北の圧力差が大きく、さらに上空ほど、その差が大きくなります。
そのため上層ほど偏西風が強く吹くことになるんですね。
日本からヨーロッパへ飛行機にのって旅行したとき、行きより帰りの方短時間で到着した経験をされた方もおられるのではないでしょうか。
地衡風を想像しながら旅行するのも面白いですね。
まとめ
ここまで、地衡風の考え方について紹介してきました。
特に摩擦力のない、高層大気の風を考えるときには地衡風の考え方が役に立ちます。
気象予報士試験では数式を用いて、地衡風の強弱を考える問題なども出題されますので、考え方と合わせてしっかり理解しておくようにしましょう。
【5分で読める!】傾度風や地上風とは何か?考え方を気象予報士がわかりやすく解説!
